桂カトリック教会
 この教会を手掛けたジョージ・ナカシマは、アメリカ生まれの日系二世である。ニューホープで家具工房を開き、無垢材を使った家具の製作、デザインをした世界的な木匠であった。日本では、高松市に拠点を置いている。ナカシマ作品の特徴は、木の心を聴き、特徴、性質を掴み、ウォールナット、ローズウッド、ナラ等の無垢の堅木の木目や割れ目、木肌をそのまま生かして、木の生命観を力強く蘇らせるところに有る。これはナカシマが、日本の伝統建築に見る自然を生かした素材の使い方、日本独特の自然観に触れた影響が多く起因している。今、日本の伝統的感性が忘れられている中、アメリカ生まれのナカシマの家具にそれは残る。
 ナカシマは、大学で建築学と林学を学んだ後、ヨーロッパを放浪し、1934年(29歳)に日本に来て、レーモンド建築事務所に勤め、軽井沢で教会の設計に携わる。その後、インドに渡り東洋哲学の影響を受ける。それからアメリカに戻り、1942年からの収容所生活を経て、ニューホープでの生活が始る。
今回紹介する教会は、1967年(62歳)の作品である。
 この教会の構造は、屋根に菱形のHPシェルを反り上がらせ、それを二枚の壁で支えている。それがそのまま室内空間に成る。柱は一本も無い。このシェル屋根を掛け、柱を無くしてフレキシブルな内部空間を作る手法は、ナカシマのニューホープのスタジオ、芸術館等に見られる。空間は、一連の家具のような力強く洗練された感じはないが、ヒューマンスケールで木の素材感が素朴に感じられ、気持ちの良い空間である。
空間が反り上がる。柔らかい光が壁天井をなめる。
カトリック教会に、障子が有るのが不思議である。
家具にジョージ・ナカシマを見る。
十字架の窓、照明を見る。細部に渡ってオリジナルである。
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